区民のつどい 在宅における「いのちのケア」について ~臨床宗教師の視点から~ を開催しました
平成29年5月27日(土)午後1時30分より緑文化小劇場ホールにて、区民向け講演会を開催いたしました。当日は会場が満席となる450名もの方にご来場いただきました。
講演会の内容は以下のとおりです。
プログラム1.基調講演『わかってもらえない「痛み」と「つらさ」について』
緑区地域包括ケア推進会議 在宅医療・介護連携部会 部会長
みどり訪問クリニック院長 姜 琪鎬氏
プログラム2.講演『終末期における「いのちのケア」について』
沼口医院(大垣市) 臨床宗教師 田中至道氏
プログラム3.対談『かかりつけ医・臨床宗教師からみる「看取り」~それぞれの立場から~』
山口クリニック院長 山口民夫氏
沼口医院(大垣市) 臨床宗教師 田中至道氏
姜先生による基調講演では、終末期における「スピリチュアル・ペイン」について理解を深めて頂く内容でした。自分で自分のことができなくなっていくことや人の世話にならなくてはならない状態にある「つらさ・苦しみ」を例えに、「自立」と「自律」の意味や考え方について、「自立」は「依存」の反対語ではないということ、また「自律」という「自分で自分のことが決められる」ことの価値に注目したお話がありました。
メイン講演では、僧侶でもある田中臨床宗教師が臨床宗教師の役割や必要性を、実際の活動の様子を交えてお話し下さいました。役割として、目の前の苦悩する方に寄り添うこと、その人がその人らしく安心して生きていくことができるよう支えていくこと、また宗教や死生観を語る文化が失われた現代の日本にあって「死という暗闇に降りていく道しるべを示す(故 岡部健医師の言葉)」ことの必要性を挙げられました。
また対談においては、山口先生より、かかりつけ医として緑区で在宅での看取りをしてこられたご経験をもとに、緑区の現状の紹介と私達がどのような準備をしていけるとよいかの提言を頂きました。
その後、山口先生と田中氏で訪問時の服装、訪問先での配慮、また臨床宗教師の人数や活躍の場、「お迎え現象」などを話題に対談が進みました。
田中臨床宗教師からは「死がどこか悪いものと捉えられてはいないか。自然の摂理として、命というものは必ず終えていかなくてはならない。皆さんの死のイメージを、亡くなったら終わりの“命”と亡くなった後も受け継がれていく“いのち”、繋がっている“いのち”があるということも感じて頂ければ」とのメッセージがありました。
最後は、これから独り暮らしで家での最期を選ぶ方が増えていくなか、そのような方々を精神的に支える役割としても臨床宗教師の必要は高まっていく、との五島 明 緑保健所長の言葉が対談の結びとなりました。
今後も在宅療養や在宅での看取りについて理解を深めていただけるよう、区民の皆様に向けた講演会を企画して参ります。次回も是非ご参加いただきますようよろしくお願いいたします。