区民のつどい 『人生の最期まで口から食べる幸せを!』を開催しました

 

 平成30年10月13日(土)午後1時30分より緑文化小劇場ホールにて、区民向け講演会『人生の最期まで口から食べる幸せを!』を開催いたしました。当日は407名の方にご来場いただきました。

 講師のNPO法人口から食べる幸せを守る会 理事長 小山珠美氏からは、「食べるということがいかに命の根幹であり、食べられず辛い時間を強いられている患者さんやそのご家族の生きる力を回復させるか、生きる幸せの実感につながるか」ということ、また「そのために市民一人ひとり、患者さん、ご家族、専門職、行政、地域、社会ができること」についてVTRの視聴を交えながら具体的なお話がありました。
  
 医療・介護のケアが必要な患者さんのなかには、摂食嚥下(口から食べること・飲み込むこと)が難しいとの診断により、口から食べ物を摂ることが制限され、人工栄養を管から胃や腸に直接入れる(胃ろう、腸ろう)、あるいは点滴で血管に入れる(中心静脈栄養)などの「栄養療法」を受けて療養している方々がおられます。
 小山講師は、
「食べることは生きることそのもの。食べられないって本当に辛い。食べられない人がひとりでも家族の中にいたら、食べられている人もおいしくないし、辛い。家に、もし寝たきりで胃ろうだけの人がいたとしたら、おいしい匂いも出せないだろう、料理もしたくないだろう、生活が全然楽しくないだろうな、ということを患者家族の話、実際の訪問で目の当たりに感じるようになった。」
「口からおいしく人生の最期まで食べ続けることができること、これは人間が生きることにおける“尊厳”とされなければいけない。つまり口から食べるという“食べる権利”があり、それは“生きる権利”と等しい、そこまで食べたいという願いを皆さんぜひ持ってほしいと思う。」
「最後の最後まで食べ続けて命を終わらせたいと皆が思えば、社会全体は変わってくる」と話されました。
 まず、誰もが加齢により食べる力は必ず衰える、また脳卒中や認知症、癌、誤嚥性肺炎などは他人事でなく自分にも起こりうると覚悟し、しっかり予防をしていくこと、その時にどうするかを考えておくことの必要性を強調されました。
 また、口から食べ続けることができるかどうかを判断するための嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査については、患者さんの状態や環境設定によっては必ずしも正確な評価とならず、検査状況により患者さんの能力が発揮しづらいこともあることに触れられました。患者さんの食べる力を見出す評価、力を引き出すリハビリの可能性に対して、多職種によるチームサポートが必要であり、有効でもあること、加えて入院早期の取り組みにより回復が早まり、早く元の生活に戻ることができることを、論文やデータを示しながら実証的に説明されました。
 さらに、こうした取組みを進めるうえで、患者さんやご家族もチームの一員となり、医療者任せにせずにしっかりと情報を取り、一緒になって治療やリハビリに参画することが大切である、とメッセージが送られました。同時に、ケアの充実に向けて、とくに医療・介護専門職には正しい食事介助技術の習得とスキルアップの必要性があると述べられました。 
講演会の最後には大きな拍手が沸き、たくさんの感想がアンケートに寄せられました。

区民向け講演会は、医療や介護が必要になっても最期まで安心して過ごすことができる地域を目指して開催しています。区民の皆さまに役立つ知識や情報をお伝えするほか、テーマ内容について考えを深めたり、意見交換や話し合いのきっかけとしていただくこと、地域でテーマの共有を図り、地域全体で課題に取り組む意識を高めることも目的です。
今後も、安心して療養できる地域づくりのために幅広い世代の多くの方にご参加いただけるよう企画を進めて参ります。よろしくお願いいたします。



アンケート集計結果をご覧いただけます。(記述回答は一部のみ抜粋し掲載しています。)
アンケート集計結果.pdfLinkIcon