平成30年度 第1回緑区多職種連携研修会を開催しました

  
 平成30年7月22日(日)午後1時30分より、緑区徳重地区会館体育室にて『多職種向け連続研修会多職種で取り組む“口から食べる”ための支援 <第1弾>』開催いたしました。
 今回は愛知医科大学病院緩和ケアセンタ―講師の前田圭介先生をお招きし、「最期まで口から食べるための支援~KTバランスチャートの使い方」をテーマに、講義とグループワークにより、多職種協働の食支援を実践的に学ぶ機会としていただけるよう実施いたしました。
 当日は87名の方に参加頂きました。 

 講師の前田先生は自己紹介のあと、「ほかの動物と違って、人間は食べることによろこびを感じています、幸せを感じています。動物は、よろこびを感じているというよりは、やはり生きるために食べることに興味があるというところです。人間は、それプラス、食べるというよろこびとか楽しみ、しあわせ感・幸福感を感じるようにできていますので、食べる支援というのは、とっても重要なんじゃないかなと思います。きっと皆さんもそう思われていることと思います。」と話され、講義に入られました。
 まず「サルコペニア(全身の筋量減少と筋力低下)」についての原因、状態やリスクの解説がありました。じつは食べる時にも口や首の筋肉がたくさん使われており、サルコペニアは食べる機能の低下も引き起こしている、つまりサルコペニアが「摂食嚥下障害」の要因になるとの話がありました。この「サルコペニアの摂食嚥下障害」は予防が重要で、予防のためには、食べ続ける、動き続ける、日中起き続けるというような「リハビリ」、「しっかり栄養を摂ること」、口の衛生と機能を維持する「口腔ケア」がとくに重要となると説明されました。そして食支援に必要な多くの項目を包括的に評価できる“KTBC(K:口から T:食べる B:バランス C:チャート)”が紹介され、その考え方や有効性、活用方法について説明がありました。KTバランスチャートは、多職種が協働評価をし、課題抽出をして「食べるケアプラン」を具体化するための“食支援促進ツール”であること、食べる機能の見える化によりその人の弱み強みを瞬時に見出すことが可能となる、支援アプローチを考えるためのツールであることを説明されました。 
  

  続くグループワークでは、KTBCを用いて2つの症例の支援策を検討しました。ここでは繰り返し「KTBCは点数をつけることが目的ではなく、強みや弱みの分析から実際に何をしていくのかを考えることが目的であり、重要である」ことを強調されました。
まず各人がKTBCの13項目に点数をつけ、その後、講師の指導により1項目ずつの点数を会場全体で確認し、講師の入力結果がチャートでスクリーンに映し出されました。「KTバランスチャートの出来上がったものを見て、じゃあこの人にどのように食支援を始めるかをグループワークで考えてほしい。多面的な視点で具体的なアプローチを考えて出してください」との指示があり、各グループが検討に入りました。
 グループ発表では、「離床を進め体位をしっかりとれるようにする」との意見に対して、講師より「具体性に欠ける。離床を進め体位をしっかりとれるようにするために何をするかを考えないといけない」、また「口腔内のケアを行う」に対して「歯科医に依頼すればOK?自分たちは何をしますか?歯科衛生士がする専門のケアのことではなく、(症例にある)特養では介護士が何をしましょうか」「専門職に依頼して終わりというわけではない。専門職に丸投げはやめる。自分たちでできることは何か」など指摘があり、より実際的な支援方法へと検討が深まりました。
 KTBCの活用イメージを掴み、多職種協働の意義を学ぶ機会になったのではないかと思います。


 また、アンケートでは、研修会に参加してよかったと思うか?の設問に対して83%の人から「大変良かった」と回答があり、満足度の評価が非常に高い研修会となりました。
「実際にある壁を考えるのではなく、可能性を考えることが大切だと気づいた」
「今日の研修で、誤嚥性肺炎を起こさないために、食べることを躊躇し、胃ろうで過ごす人へのアプローチが間違っているということに気がついた。多職種での話し合いをもっと行うべきと反省した。今後に必ず生かしたい」等の感想をいただきました。

 さいごに、在宅医療・介護連携部会 姜部会長が「食べられないということに対して、13項目から体系的に見ていくと、これまで掴みどころのなかった世界が、ここから探ればいいのではないか?と掴みどころが見出せたと思う。ここで勉強してよかったね、で終わらせたくはない。ぜひこれを緑区に標準的な指標として定着させていきたい。現場で使っていただきたいと思う。」と会を締めくくりました。

 在宅医療・介護連携部会では、今年度「最期まで口から食べるための在宅支援」を年間テーマとし、多職種向けの研修会を全2回の連続研修会として企画しております。次回<第2弾>は竹市美加先生を講師にお招きし、食支援の基礎的講義と食事介助の演習など、知識と技術を総合的に習得していただける内容を予定しております。開催日は11月25日(日)です。詳細は9月下旬ごろ、当ホームページ及び下記HPにてご案内いたします。
 
 また10月13日(日)には区民向け講演会を開催予定です。講師はKTBCの開発者であり、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』にもご出演された小山珠美先生です。最期まで口から食べる幸せの実現は、「患者さん・ご家族の思いや力」を専門職が支えるところから始まります。「食べられなくなる」ということ、「食べる」ということについて、区民の皆さまが改めて考える機会としていただけるよう企画をしております。

 今後も、多職種それぞれの専門性が発揮される連携支援、緑区におけるチーム力の向上を目指して研修会を企画して参ります。よろしくお願い致します。

  

研修会及び講演会のご案内

緑区在宅医療・介護連携支援センター ホームページ
  

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