平成30年度 第2回緑区多職種連携研修会を開催しました

  
 
 平成30年11月25日(日)午後1時より名古屋市徳重地区会館にて、「多職種向け連続研修会 多職種で取り組む“口から食べる”ための支援〈第2弾〉」を開催いたしました。参加者は80名でした。 

 

 今回は、訪問看護ステーションたべるの管理者であり、NPO法人 口から食べる幸せを守る会 副理事長の竹市美加先生をお招きし、7月の第1弾に続き “KTバランスチャート” を活用した包括的食支援について、講義・演習・グループワークにより総合的に学習しました。
介助技術のポイントのほか、患者さんの食べる力を評価する際の考え方や、効果的な支援の方法について理解を深めました。 

 講義では、まず摂食嚥下のメカニズムについて説明がありました。
嚥下の5期モデルやプロセスモデルの解説により、食物を認知してから食道を通過するまでの一連の機能とその働きの意味を学びました。次いで、いろいろな態勢でお茶を飲む演習を行い (上を向いたまま、片腕をおろし上半身を傾けて、足を投げ出しイスからずり落ちてなど)、「摂食嚥下障害」とは、機能の問題だけによるものではなく、姿勢や環境による影響も要因となっていることを体験により理解しました。 
 また、誤嚥性肺炎の発症要因については、単に食事の誤嚥によって罹るものではなく、抵抗力の低下した身体への細菌の侵襲によって起こるため、口腔内の細菌コントロールや抵抗力をあげることの方がむしろ重要との説明があり、「少々誤嚥をしても、肺炎を起こさない体を作って、食べ続けることが大事。適切な食事介助でリスクは減らせる。そのために私たちが何をしないといけないのかを考えていきたい。」と話されました 。
 さらに誤嚥に伴う“むせ”は、肺炎を予防する一つの大事な機能として捉えられ、その評価と対応について丁寧な解説がありました。安全な嚥下を助けるとろみの付け方の演習もおこない、とろみの付け方を誤るとかえって嚥下を妨げ、逆効果となること、むせの状況やとろみの評価を適切に行うことの重要性が伝えられました。
 演習が終わると、各自で作ったとろみ液を飲み干すよう指示があり、会場がどよめくなか、講師は「研修でこれをお願いすると皆さん、えーっと言われるんです。でも皆さん、患者さんに対しては強制していませんか?患者さんは毎日1リットルは飲んでいます。たかだか100ミリリットルです、飲んでください。患者さんの気持ちがちょっとわかると思います。」と参加者に話されました。 
 後半は、13の評価項目からなる“KTバランスチャート”の活用についてのレクチャーでした。「KTバランスチャートは評価するためのものではない。評価をもとに、その方にどうやったら食べて頂けるかというアプローチ計画を立ててもらうもの。」「13項目を包括的にみて考えていくこと。全部が連動している。どこからアプローチしたら、効率的によくなっていくか、早期経口摂取にもっていけるか、それを考えていくのがKTバランスチャート。」と紹介されました。一つ一つの項目が持つ意義や、評価方法および支援スキルについて、より具体的な説明がありました。食事介助のポイントを理論的に学び、実技演習の介助イメージにつながる予習となりました。 

 

 
 実技演習では、はじめに2人一組で介助をしあい、互いに食べやすさ飲み込みやすさのフィードバックをこの後、医師2人が患者役、介助者役となって舞台で実演し、講師より介助動作に即したレクチャーがありました。「患者さんに食べ物をしっかり見せて……これ全然視線に入っていないのわかります?(会場笑い) 先生、見せているつもりじゃだめです。距離が近いし、顎があがっていっているのがわかりますか?目から25~30㎝のところで見せると顎が勝手に引けます」。 患者の車いすの座り方、足の位置、机の高さ、姿勢、介助者の位置、食べ物の見せ方、ゼリーの掬い方、一口量、口へのスプーンの入れ方、抜き方、次の一口のペース、セルフケアの方法など、適切な介助をおこなうために基本となるポイントを教わりました。 
 再び参加者同士の演習に入り、講師とアシスタントの方が会場を周り個別に指導されたり、質問に答えながら実技・解説をされると、周囲に参加者が集まり熱心に講師の手元を見ていました。 

 
 最後に、事例に基づいてKTバランスチャートを作成し、講義と演習を踏まえ、具体的な支援方法を考える個人ワークとグループワークを行いました。そのうえで、講師が一項目ずつ会場の発表者の点数をチャートに落としながら、なぜその点数をつけたのか?何をしていこうと考えるか?など、参加者への質疑を交え、「KTBCは最大限食べられる状態にしてまず評価する。そこからできる所をステップアップして評価していくこ
とが大事」「5点がついたからOKではなく、よいところはよい状態を維持していくことを考える。よいところを生かしながら悪い所をカバーしていく。」など、評価をおこなう際の注
意や目標、評価後のアプローチ方法の考え方を解説されました。KTBCを用いた支援展開についての具体的な説明もありました。講師自らの事例によるチャートの紹介があり、初めに何を読み取り、どのように考えて、何をしていったのか、さらに支援結果のチャートを示しながら、次に何を考え、何をしたかを話されました。家族やチームとどう取り組んでいくか、現場での活用をイメージしながら理解を深めました。
 
 研修のまとめでは「包括的視点で介入することが大事」「多職種が連携し面で支えていくことで患者さんが持っている力が最大限に発揮される」と、改めてチーム支援の重要性に触れられました。
 また、「医師の言葉は本当に重い、簡単に食べられないと言わないで欲しい」という言葉とともに、医師が経口摂取を安心して任せられるスタッフが周りにいなければ医師も指示が難しくなる、とスキルアップの必要性を強く伝えられました。 

 

 緑区では、地域の療養者が「安全に美味しく口から食べ続けることができる」よう、また「食べるということを当たり前に多くの方が選択できる」ように、引き続き取組みを進めて参ります。  
 部会では今後の取組みに向けて多職種の皆様からのご意見、ご提案もお待ちしています。
今後もよろしくお願いいたします。 
 
 
アンケート結果はこちらこちらからご覧いただけます。